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【新刊】『ゾンビ襲来:国際政治理論で、その日に備える』ダニエル・ドレズナー、谷口功一 (翻訳)、 山田高敬 (翻訳)

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四六判/240ページ

十五年前、色々な州をまわるドライブの途中で、私はグレイスランド〔エルヴィス・プレスリーの旧居〕に立ち寄った。私が参加したツアーがジャングル・ルーム〔レコーディング・スタジオとして使われた部屋〕に着くまでの間に、エルヴィス・プレスリーの邸宅を歩き回る三十数人の人びとは、二つのグループに分類された。第一のグループは、まったくもって完全にエルヴィスに身も心も捧げた真剣な人びとだった。彼らはハードコアなファンであり、グレイスランドは、彼らにとってのメッカであり、エルサレムであり、そしてローマであったのだ。その多くは、彼らのキングが今でもこの地上を歩き回っているのだと確信しているようだった。彼らはジャンプスーツのコレクションを目にすると、その壮麗さに目眩をおぼえながら、息を呑んだ。
第二のグループは、グレイスランドにいることを等しく喜んではいたが、それは第一のグループとは別の理由によってだった。この人たちは、エルヴィスにまつわる諸々のキッチュさを楽しんでいたのだ。彼らにとって、緑色のモジャモジャのカーペットや鏡張りの壁などの美学を保存した邸宅は、変チクリンで野暮ったいものだった。同じくジャンプスーツのコレクションを目にした時、彼らはあまりの馬鹿馬鹿しさに目眩をおぼえて、息を呑んだのだった。
歩き回っているうちに、われらがツアー・ガイドの、真のプロフェッショナル精神が私の心を打った。その職務は容易なものではなかった。彼女は、熱烈な信者たちの全員に対してエルヴィスに関する正確な知識を提供しなければならない。それと同時に、彼女は、残りの人びとに対しては、このツアーの滑稽さを認めなければならなかったのだ。
表情の微妙な変化と声のトーンのわずかな調節によって、われらがガイドは、彼女の職務を見事に遂行した。いかなる点でも、彼女は信者たちの目にエルヴィスを蔑ろにするようには映らなかった。私は、今日、グレイスランドから帰った人は皆、この訪問に完全に満足していただろうと確信している。
本書は、このグレイスランド・ツアーの一種だと思って欲しい。ほんのちょっとの脚注と、それから、ゾンビが、くっついて来ますけど。(本書「まえがき」より)

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