サイズ:B5版変型/上製本/函入り
ページ:104頁
<概要>
永く介護した祖母、少年の頃から一緒だった犬たち、年若い友との死の別れ。それでも生きてある限り夢か恩寵のように現れる見知らぬ犬、子供たち、雨、青空……。この生は、歌によって、別な現実に変えうるだろうか。
若く福島泰樹、菱川善夫に見出され、歌壇とはなれたところで孤り前衛短歌の志を保ち、和歌古今の詩歌をまねび、日本語韻文詩の可能性を探究し、「あたらしい短歌」を刷新する歌人のほがらかな声が、切なく、ユーモラスに真摯に、この世界に反歌する。深く、呼吸をするために。
「純金の預り物」、310首。全首索引・全訓を附す。
■著者
結崎剛(ゆうき・ごう)
1985年東京生まれ。18歳で歌人・福島泰樹と出会い短歌を書き始める。その後アルチュール・ランボー全訳に着手する。また、翻訳詩集や歌集を自主制作、歌論やエッセイの寄稿を続ける。鎌倉在住。
第一歌集『少年の頃の友達』(2015年刊、私家版)
■本歌集より
生きてゐると急に死ぬから空曇りつつ手を皿にして傘にしてけよ
たえてこぬ祖母への手紙この人が書きしものいづこへと雪鹿
児は声とともに生まれきさはがしき世をなにものも隔てず聞きて
なにもしてゐないがゆゑに人に苛烈な人たちの光がけふも
歩行者通りまーすホースの水止り見守られつつ虹の下くぐる
自らを決すといふも鳥渡押すだけだつたのか空わたりけむ
いつよりかありきみからの香しきつぶての梨をわれは喰ふかな
■目次
蕩児
鏡階段
青空の函
幸福な王子